Night



「んー」

 耳の後ろあたりに、はるかはわざとらしく音を立てながら何度も口づけていた。嫌
ではないけれど、少し気恥ずかしくなる。けれど、みちるがそう言った素振りをする
からこそ、はるかはあえてそう言ったキスを繰り返すのだ。


「くすぐったいわよ・・・」

「だって、好きなんだもん。みちるにキスするの」

 頬を両手で包み込まれて、また、キスが繰り返される。こめかみにも、頬にも、耳
にも。ため息が零れて行く唇にも。それを受けながら、ついつい手が伸びてしまう。
彼女の白い素肌に。


「もう。みちるだって、くすぐったいよ」

 背中から肩口へと向かって指先を這わせていると、はるかが顔をあげて唇を尖らせた。

「お返しよ」

 みちるの言葉に、はるかはにっこりと笑う。

 普段から、はるかはあまり肌を露出しない。身体を重ねるようになった初めの頃、
ベッドの上でさえ、はるかは服を脱ぐのを嫌がった。けれど、厳しい躾の甲斐あって
何度も確かめあううちに、次第にそう言ったこだわりはなくなったようである。


「はるかは触られたくないの?」

 嫌だと言っても撫で回すけど。

「ううん。みちるに撫でてもらうの好き。気持ちいいし」

 耳元の髪の毛を指先でつまんで弄んで見せると、はるかはまたくすぐったそうに肩
をすくめた。


「でも、こっちに触ってる方がもっと好き」

 みちるの脇のあたりに手を突いて、はるかは胸元に唇を寄せる。

「・・・もう」

 調教しすぎたせい素肌で触れ合うことに慣れてきたからか、彼女は幼児返りしてい
るようで。元々はるかの愛撫はしつこい・・・ではなくて、ゆっくりと時間をかけて
してくれるけれど。乳房に顔を埋めて、舌で何度も輪郭を確かめて、口に含むその時
間が更に輪をかけて長くなっていた。焦れてしまいそうになりながら小さく俯くと、
そこを口に含んだままのはるかと目が合う。


(・・・・・・ああ)

 普段の言動から察するに、はるかの目指しているものは紳士的で大人の雰囲気を身
にまとった姿なのだろう。が。可愛すぎる。この角度と言い、視線と言い、他の表現
が当てはまらないくらいに愛くるしい。思わず髪の毛をくしゃくしゃと撫でてあげた
くなる。実際、衝動的にその頭をかき抱いてしまった。


 好きだとか。愛しいとか。この感情に名前をつけるなら、きっとそう言うことなの
だろうけれど。そんな一言では物足りない。暖かく包み込んであげたくなるような。
抱きしめたはるかをずっと撫でてあげていたくなるような。離したくなくなるような。
この熱に浮かされて止めどなく溢れてくる気持ちを一言でなんて伝えられなくて、み
ちるはただ、はるかを柔らかく抱きしめていた。


「ねえ、好きだよ。みちる」

 抱きしめられたまま、乳房に唇を寄せていたはるかが囁いた。

「僕を抱きしめてくれてる時も」

 言いながらはるかの方こそみちるの腰を引き寄せて、確かな力で抱きしめる。

「僕に抱っこされて揺られてる時も」

 絡みついたみちるの指をくっつけたまま、彼女は胸元から唇を滑らせて行く。

「全部可愛い」

 膝に、足の甲に、その指先にまで、はるかの唇が降り注いで、熱が灯されていく。
言われ慣れない言葉のせいで、耳元まで熱くなっていく。少なくとも可愛いなんて言
葉をみちるに囁くのは、はるかだけだ。


「・・・・・・あなたの方こそ、可愛らしいと思うけれど」

 両膝を押し広げられるような圧迫感を感じながら、思ったままを口にする。

「?」

 けれど、言われたはるかはよく分からないと言ったふうに目を丸くするだけで。そ
のうち、おかしそうに笑い声を漏らした。


「それはねー・・・」

 指先が膝や腿を不規則に撫でて、摘まんで、弄ぶ。それから。

「みちるに可愛がってもらいたいからかな」

「っ、あ・・・・・・」

 その声と同じような甘さを持って、彼女がみちるの中に入り込む。

「大好きな子にいっぱい可愛がってもらいたいから、可愛らしくいい子にしてるんだよ」

 はるかの行為自体は全くそういった意味合いからは遠いはずなのに、その言葉が耳
に流れ込むと、より一層、愛しさが胸の中で膨らんでいく。まるで何かのスイッチを
押されたかのように、彼女を受け入れずにはいられない。できるなら自分の中にのみ
込んで、ずっと温かく柔らかに包み込んであげたくて仕方がなくなる。


「・・・ねえ、今は?」

 息が上がる。際限なく。その隙間を縫うように、はるかが身体を擦りよせて、みち
るをじっとみつめて言った。


 しがみついて、額を擦りよせて、それでも、はるかがじっとみつめているから。そ
の姿が可愛くて、仕方がなくて叫び出しそうになる。


「すきよ・・・だいすき」



                            END



 かっこいいはるかさんが好きです。可愛いはるかさんはもっと好きです。それでもって黒く美しい
みちるさんが大好きみたいで・・・。なんかこう、かっこいいからではなく、もう母性本能をくすぐられ
るからはるかさんラブなのではないかと、そう思う私がヘンタ(略)



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