Ma Cherie


「祐巳・・・・・?」

 ふと、左肩に感じたわずかな重みに そっとその顔を窺うように首を傾ける。 そこには愛しい眠り姫が・・・。

『・・・まったく・・・祐巳が映画見よう、って誘ったくせに・・』  

 と、不満げな思考にもかかわらず、緩んでしまう顔はどうしようもなくて・・・。



「あ、あの! お姉さま、今度の週末、お姉さまのマンションでプチ映画館、なんての・・・どうですか・・?」

 そう言って祐巳はお小遣いとアルバイト代を貯めて買ったというDVDプロジェクターを祥子のマンションに持ち込んで映画
を見ようと提案してきた。もちろん私に反対する理由もなく、金曜日の今日、祐巳の自宅に車で迎え
行った私は その
プロジェクター本体はさることながら、1.8mはあろうかというロールスクリーンに驚きつつ、二人
で駐車場から2往復もして
祥子の部屋にそれを運び入れた。

 −まったく、また持って帰るの大変じゃない?−


 と言うと 恥ずかしそうに −ーいえ・・・お姉さまと一緒に見るために・・買ったのですから・・・−−と もごもごと下向い
てしまうから・・・・堪らなくなって抱きしめてしまった・・・・。


 夕食を済ませ、早目のお風呂も済ませ 二人してパジャマでプロジェクターをセットする。 今夜のセレクトは令から借りたと
いうちょっと前の洋画のラブストリー。 照明を暗く落として大きなソファに二人して寄り添って座り、ま
だ慣れないリモコンを
一生懸命操る祐巳・・・・。 80インチはあるスクリーンは家庭用とはいえかなりの迫力で
その映画の砂漠の上を飛ぶセス
ナのシーンを美しく映し出す。 こ、これは・・・嵌まりそうだわ・・・・と思いつつ、
左半身に感じる祐巳の体温にどきどきして
しまう自分に多少あきれながらストーリーを追う。


 エンディングロールが始まったまさにその時だった。 覗き込んだ先には麗しの姫・・・・。 まさに自分にとってのお姫様は、
きっと自分から誘った手前途中から襲ってきた眠気に負けるわけにはいかない、と頑張っていたので
あろう、お話が終わった途端、
がっくりと睡魔に打ち負かされてしまった。

 ふわふわと柔らかい髪が首筋をくすぐる。
 
小さな鼻腔、大きなくるくるとよく動く瞳は閉じられていて・・・、睫がふんわりとその可愛らしいピンクのまぶたを囲っている・・。
 軽く開いた唇からは 白い歯がのぞき かすかな吐息を吐き出して・・・。  と、突然、全身がかあぁ、っと
熱くなるのを
感じて・・・・、ばかな・・・なにを今更・・・なんて自嘲気味に深く息を吐くけれど、首の後ろが疼くような
感覚は消えてくれなくて・・・・。 
 どうして こんなに祐巳が愛おしいのだろう? 泣いたり、拗ねたり、妬いたり、おおよそ祐巳に出会うまでの祥子には
えられないような感情を引き出してくれたのは祐巳だけで・・・。 恋人となり祐巳の全てをためらいもなく愛せるように
なった
今でさえ 祐巳の何気ない仕草や一言でこんなにも自分は揺さぶられてしまう。 


 ねえ・・・・祐巳知ってる・・・・?
  顔を真横に傾けてあなたの唇を覆うとき・・・、

 後ろから抱きすくめて口付けをかわ
すとき・・・・、

 二人の身長差が堪らなくよかった、って思ってること・・・・。

 二人のお揃いのパジャマを初めて着たとき、
 ズボンの裾が余ってる、って拗ねてみせて、私が笑って膝まづいて裾を折り
返したとき あなたの貝殻のような爪までも愛お
しく思ってしまったこと・・・・。

 それから、私が祐巳の好みのタイプでよかった、って密かに思ってること・・・。だって聖さまや
お姉さまや江利子さま・・・・、
令だっているわ・・・。 そんな中から私を好きになってくれたことに思い出したようにほっとして
いることなんて、知らないでしょ
う?

 あなたのぷくぷくのお腹を大好きなのはばれてるかしらね・・・。

 ツインテールにしてた
時の首筋の髪の生え際の形でさえたまらなく心揺さぶられていた、って気づいてた・・・? 

 忙しくてなかなか逢えないとき
は修行僧のように耐えているのよ・・・・。

 この世が祐巳中心に回っているとは言わないけれども・・・・、やはり祐巳がいないとだめで・・・・祐巳が私を癒してくれるから・・・・。

 わがままかもしないけれど・・・・、合鍵を作ったわ・・・。 

 きっと言えるわ、 『一緒に暮らしましょう』 って。


 勇気を出して・・・、拒絶されるかもしれないけれども・・・・。

 明日、どこがお出かけして・・・、楽しいときを過ごして、ほ
わほわの幸せいっぱいの雰囲気のなかで・・・何気なく・・・さり
げなく
言うの・・・・。 

 『祐巳・・・一緒に暮らさない・・・?』 

 『祐巳の未来をすべて私にくれないかしら・・?』 って・・・・・。



                          END



 ハニーさまからラブラブ祥祐プロポーズ前夜(!?)SSを頂きましたー!!
 そう、祥子さまにとって祐巳ちゃんはお姫さまなのです、きっと。

 祐巳ちゃんに見惚れる祥子さまに胸きゅんです。
 素敵なSS、本当にありがとうございました!! 



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